発達障害もち薬剤師の随想録

発達障害を併発する薬剤師である筆者が、ADHD気質からの多くの経験から思う事をASD気質で書くブログです

修理できない扇風機と身体

4シーズン、1日16時間以上にわたって回し続けてきた日立の扇風機から異音がした。説明書の設計時における想定使用条件を見つつ電卓を叩くとなんと耐用年数である10年以上使っている計算であった。Amazonで買ったものでクロネコヤマトの延長保証サービスに追加料金をわざわざ払って加入していたので引き取ってもらい、当然のごとく修理を依頼した。

 

後日、修理サービスから電話がかかってきて「この扇風機は修理できる構造になっていない」と言う。

 

日立と言えば誰もが知る国内有名メーカーでありAmazonだからこそ7000円程度であって、定価なら万を超える代物で当然修理ができるものと思っていたので驚かされた。

 

色々交渉した結果、後継同等機種との交換となり新品が届いた。「きこりの泉」の金の斧・銀の斧、きれいなジャイアンと「きたない」ジャイアンとまでは言わないが、定期的にホコリを清掃しつつ大切に使ってきたので普段の行いが良かったおかげと自賛して納得することにした。

 

しかし、どうもモヤモヤする。

 

私はモノは基本的にメンテナンスをしつつ、長く使う派である。

 

19歳の時に買ったナショナルの自転車など、売価は19800円であったがタイヤの交換やブレーキ関連のパーツの定期的な交換、3段変速切り替えレバーでさえ3回交換しているので交換したパーツや工賃だけで定価の倍以上はかかっている計算になる。

 

使っている間にナショナルブランドは廃止になりパナソニックに統一され、初代が5年で壊れたので交換した二代目のLEDヘッドライトは今はなき三洋電機製である。

 

結果として16年以上使って塩害による耐久性を考えて泣く泣く処分した。もちろん、使えそうな部品取りを徹底的に行なった上である。ちなみに三洋電機製のヘッドライトは今でも問題なく点灯するのでさすが世界の三洋電機といったところだろう。

 

革靴は3万円でお釣りがくる値段で買ったが、靴磨きのプロに頼む定期的なメンテナンス代だけで3万をゆうに超えている。

 

他にも一眼レフカメラをはじめ、10年選手の道具が家にはたくさんある。

 

昔の製品は概してメンテナンスをして長く使えるようになっていた気がする。電車もそうであると思う。今でも現役で走っている国鉄車両がそうであるし、初代の0系新幹線など半世紀近く走っていたが最近の新幹線車両は詳しい人が言うには10年程度しかもたないらしい。

 

道具は何でもそうだとは思うが、定期的にしっかりメンテナンスをしていると信じられないくらい長く使えるものである。

 

古くから日本では物には魂が宿るとされ、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」では化け草履として古い道具が妖怪化してモノを大事にしなくなった人間に復讐してやるという形で登場している。聞けば普段使う道具レベルでも魂が宿るという概念は欧米にはなく日本独特のものだという。

 

とここまで書いて気がついたことがある。

 

我々の肉体

 

これも立派な道具ではなかろうかということである。

 

厄介なことに替えがきかない。泉に飛び込んだら性格まで美しくなった「きれいなジャイアン」が出てくることはない。

 

道具を大切にする文化は尊重すべきだが、肝心の我々の身体をいたわるという面では打って変わり、日本人ならではの慢性的な長時間労働やお客様の前で水を飲んではいけないなど異様なまでの滅私奉公精神を求められるという点では欧米以下である気がする。

 

ちなみに某一流ホテルの宴会配膳で走り回っていた時は、従業員トイレの手洗いの蛇口の水をがぶ飲みして水分補給をしていたものであった。

 

まず大事にしないといけないのは他でもない我々の身体である。

 

私は漢方も学んでいるが、人間には大きくわけて「低血圧」と「低血圧でない人」の2つに分類される。低血圧の人は私自身も含めて3割程度いるらしい。低血圧タイプの身体はとかく無理がきかない。暴飲暴食などすれば翌日はトイレで地獄を見るし、激務をやればすぐにぶっ倒れる。

 

ちなみに漢方と書いたのは、低血圧の薬物治療で最も効果的かつ最短で結果が出るのが漢方だからである。

 

低血圧ではない人は暴飲暴食もできるし、激務もできる。我々低血圧からすれば根本的な身体の造りが違うようにさえ感じ、とても同じ人間とは思えないほどである。ホテルで働いたときなど、例外なく熱を出してぶっ倒れたものだった。

 

しかし、暴飲暴食と激務は確実かつ静かに身体を傷つける。40代半ばにもなれば基礎疾患が顔を出してきて血液検査の結果は目を覆いたくなるものがあるだろう。その点、低血圧タイプの場合は「道具」の傷みが少なく、定期的な運動と食事も含めて規則正しい生活さえしていれば血液検査の結果は年をとってもそこまで悪くはないことに低血圧の高齢者の血液検査の結果を見る度に驚かされる。

 

とか偉そうなことを言いつつ、普段使っている道具以上に自分の身体のメンテナンスができていないことがわかっているので何とも嘆かわしい。

 

(おわり)