発達障害もち薬剤師の随想録

発達障害を併発する薬剤師である筆者が、ADHD気質からの多くの経験から思う事をASD気質で書くブログです

飛んでいった指が元通りに動くようになった男と亀

もう10年ほどになるだろうか、小笠原諸島に長期間滞在したことがあったのだが、そこで不思議なオジサンに遭遇した。

 

カヤックツアーなど宿の手伝いをする代わりにドミトリー二段ベッドの下段を住居として提供して頂いて滞在していたのだが、東京の竹芝桟橋に向けておがさわら丸が出港した日の翌日が休日と決まっていた。休日には島の長期滞在者がお世話になる事が多い農園でボランティアをさせて頂くことが多かった。ボランティア終了後には島の野菜や果物をおすそ分けしてもらって、貴重なビタミン源としていたものである。

 

農園でのボランティアの休憩時に島に在住の男性と話していた。いわゆる原住民に近い、純粋な日本人ではないのだが話を聞いて非常に驚いたことがあった。

 

何でも「俺の指は四本とも丸鋸で間違えて吹き飛ばしたが、氷漬けにして内地に持っていって手術したら元通りになった」らしい。

 

その「四本の指」を見せてもらったが、どこから切れたのかもわからないほど見事な繋がり方をしている。握力対決もしたが、肉体労働をバリバリこなしていた当時20代の私でさえ敵わないほどの凄まじい力であったし、握ることができるということは神経も通っていることになる。

 

もっとも一番驚いたのは手術をした医師であったらしく、瞬く間に噂は全国に広まったという。

 

あまりにも珍しい「症例」を見るために全国各地から医師が病室に大勢押しかけては、入れ替わり立ち替わりこの「症例」を目の当たりにして驚嘆していたというのだ。

 

医師もなぜこんな事が起こるのが皆目検討がつかなかったという。ただ仮説として、島の人は伝統文化としてウミガメを常食する。亀は万年という言葉が示すように、亀は非常に生命力が強い生き物として知られている。伝統文化としてウミガメを常食することにより、亀の体質に近いものを会得しているのではないかということになっているようではあるが、真偽の程は未だ定かではない。

 

その後しばらくして帰郷した私は翌年に薬剤師の国家試験に合格して漢方薬局に勤めることになるが、必然的に「体質改善」という言葉をよく聞くようになった。

 

アレルギーを発症しやすい体質、結核を発症しやすい体質、脳卒中になりやすい体質などを漢方を長期間服用することにより改善していくという考え方である。もちろん食生活は真っ先に見直すべき事項となる。

 

普通の人が聞けば胡散臭いと思ったり、継続的に金儲けをしているだけと思うかもしれないが、長い時間をかけて体質を変えていくという概念が私の中にスッと、抵抗なく入ってきた理由の1つには島で出会った例のオジサンの一件があったと思っている。

 

長い時間をかけて継続的に摂取しているもの、運動などの生活習慣は間違いなくその人に対して良い方にも悪い方にも影響を与えている。それは飲食物のみならず、その人の考え方や物の見方など目には見えない習慣も含まれていると考えてよいだろう。

 

日々何気なく触れているものを少し見直してみるだけで非常に面白い発見があったりする。昨年からご飯の量を半分程度にしているが、体脂肪率も体重もぐっと落ちて走る上で非常に助かっている。ありがたいことに人間ドックで再検査も何もない。反面、外食で出されるご飯の量のあまりの多さに驚く。以前はお代わりまでしていた事が信じられないほどであり、これでは不健康まっしぐらであると気づけたことは大きい。

 

いくつになっても、こういうことを大切にしていきたいものである。

 

(おわり)

 

※ウミガメを常食すればケガがたちどころに治るわけではありませんので、あしからず。

 

島の漁師さんにご馳走してもらったウミガメの手と胃袋を塩と酒のみで煮込んだ料理が食感とともに味もなかなかの美味で、これにも驚いた記憶があります。ウミガメを食する事は伝統文化なので日本人らしく、余すところ無く頂く点にも感激しました。ちなみに、ウミガメが臭いか臭くないかは食べてきた餌によるので甲羅を開けてみないとわからないとも伺いました。旅先の一食は貴重です。島を訪れた際には勇気を持ってウミガメ料理を食してみてはいかがでしょうか。